休日の充実

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読書 52ヘルツのクジラたち

本屋大賞で話題になり、内容を見てすぐに買いました。
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52ヘルツのクジラとは
他のクジラが聞き取れない高い周波数で泣く、世界で一頭だけのクジラ。
たくさんの仲間がいるはずなのに何も届かない、何も届けられない。
そのため、世界で一番孤独だと言われている。

自分の人生を家族に搾取されてきた女性、貴湖と、母に虐待され、ムシと呼ばれていた少年、愛(いとし)。孤独ゆえに愛を欲し、裏切られてきた彼らが出会い、新たな魂の物語が生まれる。

以上が本の帯に記されていた。なかなか届かない声をキャッチする物語。聴こえないといわれる声をなぜキャッチできるのか、どのようにキャッチするのか。そしてどうなるのか。

貴湖は、母と義父から虐待を受けていた、高校卒業後は、義父の介護に全てを費やした。そうさせられた。
もう、限界、というときに救ってくれたのが、高校時代の友人、美晴と、その同僚、アンさん。その後、会社勤めをしたが、どん底に落ちるような経験をし、ひっそりと田舎暮らしを始めた。
そこはかつて祖母が住んでいたところ。そこで少年と出会う。あざ、服装などから、明らかに虐待を受けていることがわかる。貴湖は、自分の子供時代と重なり、気になってしょうがない。自分が寂しくて、少年にそばにいてほしいという思いもあわせ持つ。
そんなとき、美晴が貴湖を探しに来た。貴湖は、誰にも告げず、携帯も解約していたのだ。自分を気にかけてくれる人がいる、それは、言葉に言い表せないほど心強かったろう。
最後には、2年間の猶予を経て、血縁関係のない貴湖が少年を引き取ることになる。2年の間に、後見人になれるよう、自分を高めることを約束した。仕事を見つけ、子供を育てる環境を整える。

人は魂の番(愛情を注ぎ注がれるような人)と出会う

これが、この物語のテーマかな。

物語の最後に、貴湖は少年に語っている。
私、あんたに会うまで死んでたんだ。私の声を聴いてくれた人の声を聴けなかった。あんたにしてることはその人に対する贖罪。その贖罪が、いつしか私を生かすようになってた。あんたのことを考えて、あんたのことで怒って、泣いて、そしたら、死んだと思っていた何かが、ゆっくりと息を吹き返してたんだ。私はあんたを救おうとしたんじゃない。あんたと関わることで救われてたんだ。

貴湖を支える人は、母子家庭で育ったとか、親の再婚で辛い思いをしたとか、トランスジェンダーをわかってもらえず苦しんでいたとか、何かしら抱えている人が多かった。それ故に共感することができたのではないか。虐待は連鎖するといわれ、実際にそういうケースが多いようだが、共感して関わることで、互いに傷を癒していくことができるのかもしれない。